About 2006年10月

2006年10月にブログ「菊池法務行政書士事務所」に投稿されたすべてのエントリです。新しい順に並んでいます。

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2006年10月

4.夫婦間に子供がいない場合(後半)


前回は、夫婦間に子供がなく、夫の両親もいないが、夫の兄弟姉妹がいるようなケースで、その夫が亡くなった場合のお話しでした。

民法の原則からしますと、相続人は、配偶者と夫の兄弟姉妹であり、割合は、配偶者が3/4、夫の兄弟姉妹1/4となります。しかし、このままでは、事例の弟も相続することになります。この結論でいいですか?ということまでお話しました。
                      ↓
「弟には一切あげたくない。すべて妻にあげたい。」ということでしたら、その意思を遺言書に明記しておく必要あります。これで、すべて妻が相続することになります。

また、兄弟姉妹には遺留分(「いりゅうぶん」と読みます)はありません。何やら、難しい話が出てきたかとお思いでしょうが、
遺留分とは、相続財産のうち、一定の相続人のために必ず残しておくべき一定の割合をいいます。
簡単な例で言いますと、夫が自分の財産は全くの他人にあげるという遺言書を書いており、亡くなった後、そのとおり、すべての財産が他人に渡ってしまったら、妻や子供は住むところすら奪われ、路頭に迷ってしまうかもしれません。そこで、遺留分とは、すべて他人に渡るのではなく、本来、夫の財産を相続するはずであった妻や子供にも、一定限度の財産を確保させようというものです。難しい言い方をすれば、遺言者の個人財産処分の自由を、家族財産の公平な分担の見地から、一定限度の制限を加えたものと言えます。但し、注意が必要なのは、この遺留分の主張ができるのは、妻、子供、もしくは親などで、兄弟姉妹は含まないのです。以下に、誰が遺留分の主張ができるのかを記載した民法1028条をあげておきますので、ご確認ください(詳しいお話しは別の機会に触れたいと思います)。

民法1028条 兄弟姉妹以外の相続人は遺留分として左の額を受ける。
1. 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
2. その他の場合には、被相続人の財産の2分の1

従いまして、今回の事例では、弟からの遺留分主張の心配もなく、遺言書によって、全財産を妻に相続させることができます。

                         (今日のまとめ)
夫婦間に子供がなく、夫の両親もいないが、夫の弟がいるようなケースで、夫が「弟には一切あげたくない。すべて妻にあげたい。」ということでしたら、遺言書を作成しましょう。弟には遺留分を主張する権利はないので、その点は安心です。

               

5.息子の妻(嫁)に財産を贈りたい場合(前半)

前回は、夫婦間に子供がいない場合についてお伝えしました。

今回は、「息子の妻(嫁)に財産を贈りたい場合」です。い場面」です。具体例として、以下の事例を考えてみましょう。
                         【事案】 
 私には一人息子がおりましたが、先年亡くなりました。夫もすでに他界しており、相続人となる者はいません。私の世話は死んだ息子の嫁がしてくれます。この嫁に、私の財産をあげたいと思っています。

(1) 遺言書がない場合
この場合、相続人でない息子の嫁には財産がいきません。亡くなった夫のお父さんにとって、子供の嫁は、特に養子になっているなどがない限り、法定相続人ではないからです。
結局、今回は、相続人がいないケースということなので、相続財産管理人が進める手続き後にも相続財産が残っている場合、亡くなった夫のお父さんにとって長男の嫁が、特別縁故者(※を参照ください)にあたるがいない限り、原則として国に帰属することになります。          
この結果でよろしいということであれば、遺言書の必要はありません。

                         ↓ しかし

「苦労をかけている息子の妻(嫁)に財産を贈りたい」ということでしたら、その意思を遺言書として、作成しておくことは、意味があります。
次回(10月30日予定)は、この事例の続きとして、遺言書を作成する際のポイントについてお知らせします。

※  「特別縁故者」とは:  
 被相続人と生計を同じくしていた者とか、その療養看護に努めた者、その他亡くなった被相続人と特別の縁故があった者で相続人でない者をいいます。例えば、亡くなった被相続人と生活を共にしてきた内縁の配偶者とか事実上の養子などです。

6.息子の妻(嫁)に財産を贈りたい場合(後半)

今回は、「息子の妻(嫁)に財産を贈りたい場合」(後半)です。
                        
前回は、子供の嫁は、特に養子になっているなどがない限り、法定相続人ではないから、財産はいきませんよ、というお伝えしました。
         
この結果でよろしいということであれば、遺言書の必要はありません。しかし、「苦労をかけた子供の嫁に財産を贈りたい」ということでしたら、遺言書が必要となります。
すなわち、相続人でない息子の妻(嫁)に財産をあげることを明記する必要があります。
今回の事案では、他に相続人がいないケースなので、以前お伝えした遺留分(週刊「ユイゴン」4回目を見てください)の心配もありません。
 
なお、相続人でない息子の妻(嫁)に財産をあげる方法として、
①上記のような遺言書による遺贈の方法に加えて

②生前贈与で息子の妻(嫁)に財産をあげるという方法もあります。
                  ↓ しかし
 この方法では、多額の贈与税が課せられることになります。
 また、例えば、居宅建物を遺贈したとすると、その建物の所有権は息子の妻(嫁)に移転し、遺言者が不安定な地位に立つことになります。財産をもらったら、いきなり態度が豹変して面倒を見ない、なんて話、残念ながら、よくある話です。つくづく人間とは本当に弱い生き物だと感じてしまいます。
 このようなことから考えると、財産をあげるにしても、生きている時にあげるのではなく、亡くなったら財産が移転できるような状態にしておく、①の遺言書による遺贈が妥当と思われます。

                     (今回のまとめ)
相続人でない息子の妻(嫁)に財産をあげたいなら、遺言書を書こう!

7.先祖代々の家業(農業資産等)を特定の子に受け継がせたい場合

今回は、「先祖代々の家業(農業資産等)を特定の子に受け継がせたい場合」です。以下の事案をみてください。
                        【事案】 
Xさんは妻Yと農業を営んでいます。子Bは都会に出て、会社員をしているので、農業を受け継げるのは、子Aだけです。財産は農地および農業用施設を兼ねた自宅のみです。子Aには、農業を続けてもらいたいと、Xさんは考えています。
このような場合に、Xさんの遺言書がなく、Xさんが死亡してしまった場合、どのようになるでしょうか?

(1) 遺言が無い場合
 この場合には、民法の原則に従います。法定相続によると、妻に1/2、子Aに1/4、子Bに1/4となります。本事案の場合、農地・農業資産等を子Aのみに受け継がせることはでません。
Xさんが、この結果でよろしいであれば、遺言書の必要はありません。 
                    ↓ しかし、
「農地を細分化したのでは農業経営が成り立たないので、農地および農業施設を子Aに相続させたい」
ということでしたら、その意思を遺言書として、作成しておくことは、意味があります(但し、以前、お伝えした、「遺留分」というものが問題とはなってきます)。

次回(11月5日予定)は、遺言の書き方の注意点について、お伝えします。