◆中小企業の事業承継問題は、ここ数年、社会的に注目を集め、様々な問題点などの提起が盛んに行われてきました。
事業承継問題というと、従来はオーナーの相続税対策と結び付けられて考えられてきました。
◆しかし、現在、『わが国経済の基盤である中小企業』を事業継続の面で支援し、『雇用確保』『地域経済の活力維持』『技術の伝承』という大きなテーマを掲げて、会社経営の承継をいかに円滑に進めるかという観点で施策の整備が進められています。
そして、平成20年2月に『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法案』(いわゆる「経営承継円滑化法案」)が国会に提出され、4月に衆議院を通過して参議院に送られました。
これは、中小企業の事業承継の阻害要因となっている現行の遺留分制度に関して、民法の特例を定めるとともに、金融支援の特例を設け、事業承継の円滑化を図ることを目的とした法律です。
◆遺留分とは、
兄弟姉妹以外の相続人(配偶者及び直系血族)に対して最低限の資産承継の権利を保証する民法上の制度で、その額は相続人の法定相続分の2分の1(直系尊属のみなら3分の1)と規定されています(民法1028条)。
遺留分を侵害された遺留分権利者は、遺留分の減殺請求権を行使することにより、贈与・遺贈財産等の返還(または価値弁償)を受け、遺留分を確保することができます。
しかし、減殺請求権が行使されると、遺産の対象となる株式についてもその対象となるため、後継者が安定した株式を取得できるとは限らず、中小企業の事業承継の阻害するおそれがあります。
そこで、経営承継円滑化法によって、
(1)一定の要件を満たす後継者が、
(2)遺留分権利者全員と合意し、
(3)所要の手続き(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、
次のような特例が適用できるようになります。
◆(経営承継円滑化法の2つの特徴)
1 生前贈与株式等を遺留分算定基礎財産から除外できる制度
これまでは、生前贈与で後継者に移転した自社株式についても、遺留分の基礎財産に加えられるため、遺留分侵害分を取り戻されることがよくありました。
しかし、この制度を利用すると、
贈与された自社株式その他一定財産につき、遺留分算定基礎財産から除外できるので、より確実に後継者への自社株式を移転することができるようになります。
また、遺留分放棄の手続きも後継者単独で家裁への申立てができるようになるので、非後継者の手続きが簡素化できるという利点もあります。
2 生前贈与株式の評価額をあらかじめ固定できる制度
現行の民法の遺留分の算定では、相続開始の時における価額となっているので、生前贈与後に後継者の貢献で株式価額が上昇したとすると、上昇した分遺留分減殺請求の価額が増え、後継者の事業承継の意欲を阻害する要因となっています。
しかし、経営承継円滑化法では、遺留分の算定に際し、生前贈与株式の価額を当該合意時の評価額であらかじめ固定できるので、生前贈与後の後継者の貢献による株式価値上昇分は遺留分減殺請求の対象外となり、後継者の経営意欲も阻害されないのです。
以上が、経営承継円滑化法(正確には、法案)です。この点については、ニーズも高いので、参議院でも可決されると考えております。可決して、実際にこの制度を利用できるのは、10月1日からです。細かい要件もありますので、早めの検討が必要です。
※ この法案と連携して、平成21年度税制改正で「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」を中心とする事業承継税制が創設・拡充されることが明らかとなっています。
今後、各制度を十分に活用した事業承継対策で、高度な技術力や雇用の確保を通じて中小企業経営の確実な発展が日本経済の基盤であることは言うまでもありません。
※ 参考オーディオブック:「どうなる!?50年ぶり相続税大改正 第2巻 国会提出! 緊急情報 経営承継円滑化法の中身」(講師:税理士 今仲清先生)(制作等:株式会社FPステーション)