遺産分割メモ19:相続分なきことの証明書のこと

1.本来の使われ方

民法903条2項は、特別受益者の相続分について、遺贈や贈与を受けた財産の価額が相続分に等しいか、又はこれを超えるときは、その者はその相続分を受けることができないとしている。

そこで、上記のような場合、登記実務上、登記原因証明情報として、その者の作成する「相続分なきことの証明書」(又は「特別受益証明書」「相続分皆無証明書」を添付して、ほかの相続人が相続による所有権移転登記を申請することが可能とされている(民事局長回答)。

記載内容は、「相続分以上の遺贈又は贈与を受けたので、相続分はゼロであり取得分はない旨が記載されるのが通例。

しかし、

実際には、労力、費用および時間がかかりがちな相続放棄、遺産分割協議書等の手続きを回避し、遺産のほとんど又は全部を共同相続人の一人又は数人に取得させる便法として利用させることが少なくない。

すなわち、相続分を皆無若しくは僅少でよいとする相続人の作成した「相続分なきことの証明書」を登記所に提出することで、前記相続人が対象不動産の持分移転登記を受けない状況を作り出す。

 

2.法律行為の効果は原則ない

「相続分なきことの証明書」は、過去の事実を証明する文書に過ぎず、処分書面ではない。そして、その作成・公布も事実行為なので、これらの行為だけで、実体的な権利変動を伴う法律行為がされたとは解されない。

よって、証明書作成者は、当然には相続分を失わず。改めて、遺産分割の申し立てができるのが原則(ただし、判例にて、例外として、認めた場合もある。でもあくまで例外。)

 

3.注意点

放棄と異なり、被相続人の債務を免れない。後日、問題が生じるおそれあり。

★判例(名古屋地判昭50.11.11判時813.70)

生前贈与を受けた事実がないにもかかわらず、贈与を受けた旨の「相続分なきことの証明書」を作成して、仮に相続人がその相続権を放棄する意思を持っていたとしても、それにより相続分を失うことを認めるのは相続放棄制度に対する一種の脱法行為を容認することになる。

 

「ケース別 遺産分割協議書作成マニュアル」(新日本法規)より

平成28年度

 

 

◆「経歴・役職」を更新しました(平成28年3月27日)。

 

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