1。背景:預金の名義は、子供だが、実際は親が通帳及び届出印を所持し、その入出金も親が行っていた場合
2.預金者の判断基準
出損者、預入れ行為者、預金名義人が異なる場合、預金(債権)の帰属先(預金者)の判断基準?
判例:定期預金につき客観説
(名義の如何にかかわらず、自らの出損により、自己の預金とする意思で預金契約をした者を預金者)
理由:出損者保護。金融機関は、約款や準占有者に対する弁済の法理で保護され、
原則として、預金者が誰かにつき、利害関係を持たないため。
しかし、2003年より「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」が施行され、
金融機関も預金者の判断基準に利害関係を持たないといえなくなった。
近年、普通預金につき、事実認定をもとに預金の帰属先を名義人と判断した判例がでる
(最判平15・2・21判時1816・47。最判平15・6・12判時1828・9)
□預金の原資となった金員の帰属先として出損者と名義人のどちらが妥当か?
□誰が預金を管理・保管していたか?
この基準によれば、親が出損して預金口座を開設し、開設後も自ら預金の管理を行っていたというケース。
よって、親が預金者と判断され子名義の預金も、相続財産とされると考えられる。
3.どのような場合に争いになるか。
上記の場合、相続人間で、
「確かに、子名義だけど、~だから親の財産だよね。だからこれは相続財産にしようね。」となれば
問題なし。遺産分割協議書で確認し、例えば、そのまま名義人たる子に相続させるのであれば、特に払い戻し手続き等は不要となる。
しかし、名義人となっている子があくまで自分の財産である旨を主張すると、争いになる恐れあり。
「ケース別 遺産分割協議書作成マニュアル」(新日本法規)より